「舞鶴湾の東側、東舞鶴地域には赤れんが倉庫や、海上自衛隊の基地など観光スポットとして知られる施設が多いのですが、西舞鶴はまた異なる趣きがあります。民家が並ぶ道の裏手が運河と接していて、そこに漁船がずらりと接岸している吉原地区の町並み。西港や市内が一望できる匂崎公園(においざきこうえん)は、物見櫓からの夕日の眺めも綺麗で、私もときどき立ち寄る場所です。」
 森真理子さんが舞鶴市のアートプロジェクト「まいづるRB」の活動に携わって二年半。“ 水が流れている光景”をごく当たり前に目にする舞鶴での生活で、森さんは「つながり」や「つながっていく」という言葉を自然にイメージするようになったという。「舞鶴で暮らすまでは“ 京都”というと、市内のイメージばかりが浮かんでいたのですが、海がずっと続くこの景色を見ていると、つくづく京都は広いなあと思います。」
 仕事柄、移動が多く、京都市内と舞鶴市内を往復することも日常茶飯事。「電車や車での移動中に海や川の景色を見ながら、よくいろいろなことを考えます。例えば、地方と都会(または中央)の違いについて。仮に京都市を都会とするなら、舞鶴は田舎だし、地方です。その場所ならではの事情が絡む地方での暮らしでは、都会で生活していた時には想像できなかった大変なこともある。でも、地方に住んでみると、かえってそれまでとは違う都会の有り様が見えてくるのです。だからこそ、舞鶴でしかできない、地域と地域との境目をつないでいくような、面白いチャレンジができるのではないかと思っています。」
 東舞鶴の「yashima art port」は、森さんが日頃の拠点としてきた赤れんが倉庫の活動が広がって誕生した、八島商店街の空き店舗を用いたアートスペース。ワークショップを行ったり、アーティストのレジデンススペースとしても活用されているが、今後も自由に、さまざまな人たちが気軽に関わっていくことのできる新しい場を目指したいという。日々、海を見ながら「つながり」と「境界」について考える森さんの今後の活動に期待したい。

大京都アーカイブ