「”鍛冶屋の桃源郷”と呼んでいる場所なんです」塩見さんの活動拠点でもある綾部市里山交流研修センター〈旧豊里西小学校〉から車で移動すること数分、 緩やかに続く坂道の先にあった小高い丘は、棚田の遠く向こうに見える茶畑の濃い緑と山の稜線も美しい場所だった。すぐ近くには小さな墳丘墓も見える。

 「綾部では、早朝の、いつもの散歩道で出会うものにも、面白さを見つけることができるんです。ある日、畑に停めてあるトラクターが、笑っている”顔”に見えたんですが、それが愉快だったのでその後も注意して見ていたら“ ギャング顔”のトラクターにも出会った。こんな風にいろいろなものを眺めると楽しいですね。”普通アート”と呼んでいるのですが、野道に落ちている木の枝の曲がり具合も様々で、これは弓、これは矢、なんて想像しながら歩きます。」
 綾部の暮らしには、その時間のなかにいつも「センス・オブ・ワンダー」というキーワードが潜んでいるという塩見さん。日常の何気ない光景の中に発見や驚きを見つけ、「見立て」の世界を楽しむ達人でもあった。
 「ある時、若いイラストレーターの卵が『現代人は何でも真っすぐにして、一秒でも早く歩きたがるけど、曲がりくねった道の奇遇性がこの村にはある』と教えてくれたことがあります。僕もそんな視点をもって生きたい。たまたまそこにあること、居合わせることを「有り合う」と言いますが、なんだ、すでにそこにあるじゃないか。足下にあるじゃないか。という発見や驚き、その喜びを大切にしたい。昔の人が作った古いものや、既にそこにある自然。それらを何かに見立てて、新たに名前を名付けたり世界を想像したりする。綾部にはそんな感覚を刺激する風景やモノがたくさんあるし、そこから広がっていく可能性をいろいろと感じています。」これまでは何となく遠い存在だったアートにも、ようやく近しい感覚を覚えるようになったという塩見さん。「半農半X」は、これからの私達の日常を変えていくかもしれない。

大京都アーカイブ

 「”鍛冶屋の桃源郷”と呼んでいる場所なんです」塩見さんの活動拠点でもある綾部市里山交流研修センター〈旧豊里西小学校〉から車で移動すること数分、 緩やかに続く坂道の先にあった小高い丘は、棚田の遠く向こうに見える茶畑の濃い緑と山の稜線も美しい場所だった。すぐ近くには小さな墳丘墓も見える。

 「綾部では、早朝の、いつもの散歩道で出会うものにも、面白さを見つけることができるんです。ある日、畑に停めてあるトラクターが、笑っている”顔”に見えたんですが、それが愉快だったのでその後も注意して見ていたら“ ギャング顔”のトラクターにも出会った。こんな風にいろいろなものを眺めると楽しいですね。”普通アート”と呼んでいるのですが、野道に落ちている木の枝の曲がり具合も様々で、これは弓、これは矢、なんて想像しながら歩きます。」
 綾部の暮らしには、その時間のなかにいつも「センス・オブ・ワンダー」というキーワードが潜んでいるという塩見さん。日常の何気ない光景の中に発見や驚きを見つけ、「見立て」の世界を楽しむ達人でもあった。
 「ある時、若いイラストレーターの卵が『現代人は何でも真っすぐにして、一秒でも早く歩きたがるけど、曲がりくねった道の奇遇性がこの村にはある』と教えてくれたことがあります。僕もそんな視点をもって生きたい。たまたまそこにあること、居合わせることを「有り合う」と言いますが、なんだ、すでにそこにあるじゃないか。足下にあるじゃないか。という発見や驚き、その喜びを大切にしたい。昔の人が作った古いものや、既にそこにある自然。それらを何かに見立てて、新たに名前を名付けたり世界を想像したりする。綾部にはそんな感覚を刺激する風景やモノがたくさんあるし、そこから広がっていく可能性をいろいろと感じています。」これまでは何となく遠い存在だったアートにも、ようやく近しい感覚を覚えるようになったという塩見さん。「半農半X」は、これからの私達の日常を変えていくかもしれない。

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