横山 キミ

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横山 キミ

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船乗りの父と芸術や音楽が好きな母をもち、海辺の田舎町で育つ。
現在は東京を拠点に活動。人の集う場を演出するグループ「NEWSEE」に関わる。
newsee.co

今までの作品について

映像、光、声や演奏、ダンスからなるパフォーマンスやインスタレーションを制作している。ときに現実のウェディングの演
出もする。参加者のコミュニケーション、心の動きが誘われる何かのある場を目指す。
AVALON(2015)、corundum(2016)、SWIMMING POOL(2016)などパフォーマンスを制作している。この秋のフェスティバルトーキョー「アイアムノットフェミニスト」(2017/10)ではパフォーマンス作品のウェディングのコーディネートを担当する。

今回のリサーチテーマ

まほろば再発見
土地
人里離れた山の上に在る場所、天王地区/ 朱智神社/牡丹園。
周囲を山々で囲まれ、実り豊かな土地で美しく住みよい古代日本のまほろばともいえる場所。
人家を抜け続く急峻な坂を登りきると、高ヶ峰(305m)の山腹に朱智神社がある。
桃山時代らしい華やかな装飾を施している本殿は、京都府登録文化財に指定されている。
昔は神楽殿があり歌舞が華やかに行われたという。祇園八坂神社の元となる神社ともいわれる。
氏子は行政領域と別の社会集団(打田、高船、天王、水取、上、多々羅、南山、 高木、宮ノ口、出垣内の拾ヶ部落)からなる普賢寺郷という歴史的領域で形成されていた。現在もその広い地域に氏子の方々がいる。
朱智神社から数分行くと個人方が大切に作り上げられた牡丹園がある。
評判を聞きつけ多くの人が花を愛でに訪れていたという。現在では一般公開はしていない。

現在
リサーチに訪れたのは夏の終わり頃、心地よい風がそよぐ山々には青々とした田畑が広がる。
急勾配の斜面には古く立派な日本家屋がなぜかある程度密集し立ち並ぶ、少し不思議な雰囲気を持つ。
新興住宅地のある市街地からそう遠くはないが、日本で推奨されてきたスクラップ&ビルドの影響をうけていないように見え、聞けば市街化調整区域に指定されており新たな開発などができない区域だそう。
そうなると景観は山々と相俟って美しいままでいるが、高齢化に伴う空き家や放置された農地を開発することはできず、新たな世代がこの辺りに住まうこともなかなか難しいようでありコミュニティの高齢化や現象が進むのだという。
それらは朱智神社や牡丹園にも少なからず影響を与えているように思えた。

コミュニケーションについて

京田辺のエリアがその昔から京都、奈良、浪速など人の行き交う土地だったせいか、人々は、見ず知らずの私が声をかけても快く相手をしてくれた。

リサーチ中滞在させていただいたお屋敷のご近所の方々、駅前の大型スーパーのフードコートに集うお年寄り、子供達、商店街の方、畑仕事をされているおじさん、木津川への遊歩道をランニングしている方々、京田辺を日々歩き回っていると、さまざまな人に出会い、声をかけてくださり、お話をたくさん聞かせてくれた。

リサーチをしている天王地域では、
朱智神社の中川宮司、牡丹園「無二荘」主の辻尾仁郎さんをご紹介いただき市の職員の方に連れて行っていただいた。
それぞれお部屋に招き入れていただきたっぷりとお話や資料を拝見させていただいた。

なによりも感激したのは、どちらのご主人も自ら美味しいお茶を淹れてくださったこと。

いつもは都会に住んでおり、日常そうそう町行く他人とのコミュニケーションはないが、知らない人と会話すことで発見すること、心が動かされることがそこらじゅうにあることを感じた。

ハプニング

京田辺は便利な立地であり、京都市内、大阪方面、奈良、各方面へのアクセスが良い印象があるが、リサーチをしている天王地区はアクセスが良いとはいえず、京田辺駅周辺からは徒歩や自転車ではまず行けない。
1日にバスが数便あるのみ。そして、今後近い未来にバスのルートから外れてしまうエリアだという話を耳にする…。

今後の展開

1.神楽殿を再現。
過去には賑わっていたという朱智神社の神楽殿を再現してみたい。
そこで定期的に様々なジャンルのパフォーマンスを上演したい。
この土地には色々な伝承や歴史が詰まっているので、それらからインスピレーションをうける。
人や土地とのコミュニケーションで作るもの。

土地が違うので神様の趣向も違うのかもしれないが、石巻の金華山では神様は騒がしいのがお好きだということで騒がしく神事を行うようである。
朱智神社の神様もきっとかつて多くの人が訪れ神楽や流鏑馬などが盛んだったというから、
少しは寂しがってるのではないかと思う。
現在では神社に人が来るのはお祭りの時くらい、その他は氏子の方がお掃除にこられる。
中川宮司のお話では若い人が動いてくれるといいのだけどとおっしゃっていたので協力してくださるかもしれない。

2.牡丹園のフォトブック制作
広い方面に向けてみてもらえる写真集を作りたい。未来の京田辺の子供達はもちろん、遠く外国の人にも見せたい。

本当に大切にされてきた牡丹園。歴史があり、この天王地域とも少なからず縁のある祇園からのお客や、多くの画家が訪れた隠れた花園。私は運良くお話を聞け、お写真を見せていただけて知ることができたがここを知ることは容易ではない。
ここを再度公開することより、ここが静かに在り続けることの方が大切なことかもしれない。
ひっそりと存在する牡丹園も魅力的だが、美しい場所がここに在ることが遠くの人や、未来の人にも見てもらえると素敵だと思った。日本以外にも遠く外国にいる方にとってもきっと興味深く不思議な場所だと思う。
辻尾さんのお宅には古い記録、素材がたくさん保管されているのでご協力いただけるかもしれない。

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