平井 槙

美術家

平井 槙

美術家

1988年山口県生まれ。京都精華大学素材表現学科テキスタイルコース卒業。
現在は山口県山口市の拠点に活動。

今までの作品について

個の感情をテーマに立体作品を中心に製作。
樹脂やフェルト、粘土など素材を合わせて用いる。

今回のリサーチテーマ

福知山市の養蚕について。

福知山市は京都府で唯一の養蚕農家が残っています。(現在1件)
かつては由良川沿いで盛んに行われていた養蚕の歴史、生活、信仰などを聞き取りを中心に調査しました。

養蚕は生物としての蚕、生活、信仰、地域、経済といろんな側面を持つとても面白い明治以後の日本の一側面を移す歴史と密接した産業です。
残念ながら現役の養蚕農家さんに伺うことはできませんでしたが、お話を伺う中で、福知山で養蚕が盛んになったのは由良川の地形と幕府の出した決まり事に理由があったり、蚕輸出のグラフの上がった時期に福知山の養蚕農家さんの収入や生活も大きく変化していたり、日本史の大きな流れが福知山の生活の中に凝縮されているのを見つけるのもとても面白かったです。

コミュニケーションについて

福知山の方は話せば話すほど親身になってくださる、という印象です。
最初は距離を置いて話していても、自分はこういうことを調べている、これを見たいと話すと、それならあの人がいる、昔はこういうことがあったといろんなことを教えてくださり、別れ際は電車の時間など帰り方の心配もしてくださって親切にしていただきました。

お話しを聞きに行ったお寺の住職さんが元養蚕農家の方を探してくださったり、大江では声をかけたご婦人方が元グンゼの研究職の方のところへ送って行ってくださったり、生活衣館では元養蚕農家の方にお話しを伺えるよう繋いで頂いたり、お話しを伺った方が次の展開に繋いでくださることが幾度もあり、大変助けていただきました。

また福知山市の城下町地域に滞在しましたが、夕方になると小さな社の前に集まるおじいちゃん達、歩行具をつけた女性に「調子どう?大丈夫?」と声をかける男性、地域の顔の見える繋がりがまだまだ残っている土地なのだと感じました。私にも朝晩気さくに挨拶をしてくださる方がいてとても嬉しかったです。

ハプニング

何回も忘れ物をして、見つからなかったものもあるのですが、
田中和紙工業所に和紙を買いに伺った時、帽子を忘れてしまい最後の数日日光がきつかったのですが、田中さんが報告会に帽子を持って観に来てくださりとても有難かったです。

今後の展開

今回、地域アートとはなんなのか体感したい、自分の制作に未知の方向からの広がりを見つけたいという想いで参加させていただきました。

正直なところ、色々な方から聞く今の土地の話、昔体験されたこと、もっと過去の歴史の出来事などどんどん集まる膨大な情報を自分の制作に繋げられなかったことがとても心残りです。リサーチとしてはとても充実した楽しい時間だったのですが、後半はもっとテーマの核を決めて集めた情報の取捨選択をするべきだったなと思います。

報告展では今の蚕供養の風景を提案しました。案としても半端なところが多くありますが、一番の反省点は調べた内容をそのまま表現しようとしたことです。お話を聞いたひとつひとつに感情移入してしまい全てを取り込もうとしてしましました。ではなくそれぞれを素材として扱う離れた目線が必要だったと思います。

遅いのかもしれませんが、これは最終報告会で皆さんの発表を聞いて気づくことができました。

Other Report