京都:Re-Search フォーラム


2016.12.5

会場:京都リサーチパーク サイエンスホール

京都府では、「Re-Search」をキーワードとした、アーティスト・イン・レジデンス事業「京都:Re-search」を府内各地で取り組んでいく。これは、府内各地域に眠る“タカラ”を掘り起こし、アートの“チカラ”を介して、新たな価値の発見や発信へと繋ぐ、地域の文化資源を生かしたプログラム。アーティストの目や力を通して地域を観察し、地域主体で芸術文化活動に関わる環境づくりを促進し、地域のポテンシャルや魅力をアートの視点からを引き出していく。本フォーラムでは、アーティスト・イン・レジデンスの第一人者をパネラーに招き、芸術は地域のためにどんなことができるか、京都府が継続的に芸術によって作られる地域になるためにはどうしたらいいか、活発な意見が交わされた。

クローズアップ

    基調対談

    「地域芸術祭の未来」

    登壇者
    港 千尋(あいちトリエンナーレ2016芸術監督)
    拝戸 雅彦(キュレーター
    あいちトリエンナーレ2016チーフ・キュレーター)
    モデレーター
    菅野 幸子(国際交流基金情報コミュニケーションセンタープログラム・コーディネーター)

    2016年に3回目の開催となった「あいちトリエンナーレ」。キュレーターの拝戸雅彦氏は、アーティストや自治体がどのような経緯で地域とどうやって関わっていったか、地域の人たちとどう交流したか、という経験談を踏まえて、アートによって地域の意識が変わることを語った。2016年の芸術監督である港千尋氏は、トリエンナーレの開催意義、そのための意識の持ち方、さらには海外でのビエンナーレ・トリエンナーレでの事例を紹介した。

    パネルディスカッションⅠ部

    「アーティストにとっての地域とレジデンス事業」

    登壇者
    松崎宏史(Studio Kura Co., Ltd. 代表者)
    山出淳也(NPO法人BEPPU PROJECT 代表理事、アーティスト)
    モデレーター
    藤 浩志(美術家/秋田公立美術大学教授)

    登壇者である松崎宏史氏、山出淳也氏は、アーティストとして世界各地のアーティスト・イン・レジデンスに参加。現在、松崎氏は福岡県糸島市で、山出氏は大分県別府市で、それぞれ国際的なアーティスト・イン・レジデンスや芸術祭を運営する立場となっている。彼らの経験やビジョンを元に、具体的に彼らのアーティスト・イン・レジデンスは何をしているか、どうやって運営しているか、自治体、地域の企業や住民とどう関わるか、といった話を述べあった。

    パネルディスカッションⅡ部

    「レジデンス事業を地域にどのように位置づけるか」

    登壇者
    樋口貞幸(インディペンデント・アート・アドミニストレーター)
    鷲田 めるろ(金沢21世紀美術館キュレーター)
    モデレーター
    小田井 真美(さっぽろ天神山アートスタジオAIRディレクター)

    モデレーターの小田井真美氏は、アーティスト・イン・レジデンスの意味や意義を分かりやすく解説した。登壇者の樋口貞幸氏は、アンケートを元にしたアーティスト・イン・レジデンス事業に取り組むアート系NPOの現状及び、その問題点を洗い出した。鷲田めるろ氏は、自身が関わる金沢市とベルギー・ゲント市のアーティスト・イン・レジデンスをはじめ、アーティストや関係者の関わり、両都市の交流を図っている現状を紹介した。

    コンクルージョン

    「レジデンス事業の可能性」

    登壇者
    菅野幸子(国際交流基金情報コミュニケーションセンター プログラム・コーディネーター)
    佐東範一(NPO法人ジャパン・コンテンポラリーダンス・ネットワーク代表)

    菅野幸子氏は、アーティスト・イン・レジデンスが、日本では公的な資金を使うために、地域活性化、住民へ成果還元を求められがちだが、イギリスなど海外では軽犯罪者と組んだり、医療や福祉と絡めて、多様な結果が生まれていると説明した。佐東範一氏は、自身が行う東北での取組として、アーティスト・イン・レジデンスをしながら、地域の人から 郷土芸能を習ったり、そこから「三陸国際芸術祭」という芸術祭が生まれたことをなど多くの事例を挙げた。


総括

    作る「こと」や発表する「こと」のような「こと」中心の文化事業が多い中で、本プロジェクトは「こと」以前の「リサーチ」をタイトルに冠した。何にたどり着けるか試みる活動によって、いろいろ広がると期待したい。

    佐東

    京都市と市以外の文化格差を感じる中、府内どの町も面白く、何かできると常日頃から思っている。そのために「大京都文化構想」を立ち上げ、その中で2020年の東京オリンピック以降も継続できる事業展開すべきだ。

    小田井

    京都府がアーティスト・イン・レジデンスを始めることで、これまで繋がっていなかった地域のいろんなものを繋げ、アーティストと地元の方に良い相互作用が生まれるような、新しい関係をつくることが肝となると思う。

    菅野

    今日のパネリストたちは、これまで何らかの形で京都に関係がある。そんな人たちが示した内容を元に、京都府がリサーチという形でのアーティスト・イン・レジデンス事業を展開していくことを、私も一緒に応援したい。

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