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大京都 2018 in 京田辺

開催期間:7月6日(金)~7月16日(月・祝)
(※金・土・日・祝のみの展示作品やパフォーマンスもあります)
展示場所:薪公民館、東沢公園、酬恩庵 一休寺 他 ※入場無料【一休寺のみ拝観料必要】
開館時間:9:00~17:00
     アーティストトーク  7月14日(土)第一部:13:00~、第二部:15:00~
     @薪公民館(京都府京田辺市薪東沢1)

     ガイド付展示鑑賞ツアー 開催期間中の金・土・日・祝

2017年度、京田辺市を中心に行った「京都:Re-Search 2017 in 京田辺」のリサーチをもとに、アーティストによる地域の新しいアートドキュメント(=記録)を作成する、『大京都 2018 in 京田辺』を開催します。
参加アーティストは、「京都:Re-Search 2017 in 京田辺」から3名を選抜し、ゲストアーティストとして昨年度講師として招き、京田辺を共にリサーチした島袋道浩氏を迎え、約2ヶ月におよぶ滞在制作と、そのプロセスを京田辺市内各所で公開し発表します。

京田辺の夏

2018年京田辺の夏は大雨と酷暑に見舞われたが、「大京都」は濃くて栄養価の高い、生き生きした実を結ぶことができた。
「大京都」プロジェクトは、京都府の各地にアーティストを招聘して滞在制作を進め、そのプロセスと結果を地域の人たち、そして訪れるひとたちと分かち合おうとする。筆者は地域活性とアートを結びつける事業にこれまで積極的に関わってはこなかったが、今回、京田辺で行われていたことは、事業というより作家側も運営側も受け入れ側も、個々人の思いと行動が繊細に織り上げた作品になって、とても印象深く知ることができた。
 3名のアーティストの仕事を振り返ってみよう。
 山本昂二郎は、行動者。京田辺の町を体ごと知る行為の作品を示した。町で長く親しまれていた唯一の駄菓子屋さん、千歳屋。ちょうど今年5月に閉店することになり、山本は女性店主から思い出の話を聞いているうち、解体される店の看板や在庫を受け継ぐことを考え、新たにリアカー上でそれらを再生させて移動店舗≪ファーストショップ≫に仕立てた。黄色とオレンジのセルロイド製ディスプレイのロゴは、ミッドセンチュリー・デザインの日本式モダンさがある。山本は特製デザインの制服(デッドストックらしい)を着こなして、移動式「千歳屋」と町を歩き廻り、子供たちが待ちわびるほどの人気者になったそうだ。作家によると店は「めちゃくちゃ楽しくて」「黒字」だというから、「誰か引き継いでくれる人があれば」よいのだが。収入のための職業ではなく、「楽しさ」のための仕事と考えれば相当な黒字が見込まれる。もう一点の≪カット&パーマ≫は、昨年の滞在時の仕事で、日ごろ行き来の少ないふたつの地域を山本ひとりが往復して、自身の頭上に両地域のコレボレーションを作る作品。旧くからある市街の美容室と、新興住宅地のヘアサロンで、散髪とパーマをそれぞれ同じ日にしてもらい、まじめな表情の彼の写真2枚で示された。ふたつの場所の「合作」は彼の頭上で長持ちしたらしい。
 横山キミも昨年の滞在のリサーチを新しい出会いで活かした。「古山陰道に通じるという天王地区にある無二荘牡丹園」を見つけ、魅了された横山は、明治から続いたこの園が遠からず閉じるかもしれないと知る。一般公開はしていないが、古くからのひとたちは皆、牡丹を見にいったことがあるらしい。作家は小高い天王地区から牡丹を撮りためた古いカラーアルバムを借りうけ、1枚を引き伸ばして展示した。牡丹色の大輪を珠のように彩る水滴は朝露だという。最も花が美しい瞬間をめざしてすべて早朝撮影された。選んだ牡丹の写真を編んで本にして、作家は1冊を来場者に供する。そして誰にでもいつでも牡丹が見られるよう、地元の図書館にそれらを置いてもらう予定だ。牡丹園主とのやりとりが本になったこの≪天王の牡丹園≫の展示のために、横山が選んだ場、「小さな平屋」も特筆される。長く荒れていたが、欧米風生活を感じさせる白いペンキ塗り板張りの家で、水田と天井川を望むピクチャーウインドーを持ち、壁に貼られた広告紙のコラージュなど住人の独自の美意識が伝わる空き家だった。作家はこの廃屋に出会って、丁寧に手をいれ魅力的な場に再生させた。ここは牡丹の本を見たり、縁側の向こうに水田を眺めながら、先達の趣味人たちを追想する場所になった。ここから天井川沿い向けて行われたコンサートもきっと素敵に楽しめたはずである。
 この川に注目した光岡幸一の≪雲に手の届く川≫は晴れた日に映える。天井川の土手に立つと向いの二階家へとワイヤーが張ってある。呼び鈴をならすとその二階の窓があき、綿菓子をデリバリーしてくれる仕掛けである。ワイヤーにクリップで挟まれた綿菓子は、空高い入道雲の孫のような姿でこちらにやってくる。真後ろに大木があり、向こうに遠く木津川の山脈を望むこの場所に立ってそれを待つ時間は愉快だ。土手の上を歩くとき、京田辺の旧街道沿いの瓦屋根の集落が見渡せる。千歳屋旧蔵分の綿菓子マシーンがここで活かされた。光岡のアイデアが地域の人と縁を結んだのは、≪ポポー≫もそうだった。タイトルは北米原産の植物の名前で、減反の話をきいた作家が何か珍しい植物を植えて実をみんなで食べたいと考えて探し、見つけた果樹だという。光岡のポポーは若苗だが、よく聞いてみればすでにポポーを何本も植えて何度も収穫している先輩が同じ町にいたことがわかった。すぐ近くに「珍しい植物を植えて実をみんなで食べたい」と同じように考えた人がいたのだった。日持ちしないので流通にのらず、名前の音がよく響くこの「ポポー」が、すでにここで実っていたことを知ると、彼の作品には幸運にも出会いが織りこまれ芽吹いて葉を伸ばしたのだとわかる。
 彼らの作品はどれも、京田辺に親身な態度でその良さを知り、良さが消えようとしていることも知り、そのせつなさをユーモアに変換して、問いかけ気づかせてくれる。アイデアと行動力と、京田辺の人たちの協力から成っている。それは3名を選び、相談にのり、ずっと制作までのプロセスにアドバイスを与えてきた島袋道浩の制作のスタイルに通じているだろう。
 島袋はこの地のシンポルともいえる、一休寺を展示場所に選んで一連の≪一休さんへ≫をしつらえた。映像作品では、パソコン「MacBook Air」のすっきりしたデザインのエッジをさらに磨いて、あろうことか刃物にするまで研ぎ澄ます。電子機器のパソコンをついに刃に研ぐと、りんごを切ってみる。と、スコン、と小気味よい音がする。この音が一休寺の枯山水庭園の傍らで響くとき、とんちがぴたりとはまった時の、的を射た感で胸がすく。手入れの行き届いたこの寺では、参道の紅葉並木がところどころ細い笹竹で支えられている。 さりげなく自然な支えを作る造営のエレガントさに私たちが気づくのは、島袋がそのうちの一本を銀色に塗っておいてくれたからである。島袋は幼少期には「へ理屈も一休さんが言うととんちになる」と注目し、長じては「一休さんは僕にとってコンセプチュアルアーティスト」と仰いできたというから、この出会いは必然だった。

光田由里(美術評論家)

プログラム

  1. アーティストトーク @薪公民館(京都府京田辺市薪東沢1)
    出展アーティスト× 浅田彰
    (大雨のため中止)

  2. アーティストトーク @薪公民館(京都府京田辺市薪東沢1)
    出展アーティスト× 光田由里氏(美術評論家)
    (大雨のため中止)

  3. アーティストトーク @薪公民館(京都府京田辺市薪東沢1)
    出展アーティスト× 光田由里氏(美術評論家)
    出展アーティスト× 浅田彰

  4. ガイド付展示鑑賞ツアー
    (大雨のため中止)

  5. ガイド付展示鑑賞ツアー
    (大雨のため中止)

  6. ガイド付展示鑑賞ツアー
    (大雨のため中止)

  7. ガイド付展示鑑賞ツアー

  8. ガイド付展示鑑賞ツアー

  9. ガイド付展示鑑賞ツアー

  10. ガイド付展示鑑賞ツアー

事業主体
京都 :Re-Search 実行委員会(構成:京都府、京田辺市ほか)
助成:損保ジャパン日本興亜「SOMPO アート・ファンド」(企業メセナ協議会2021 Arts Fund)

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京都府文化スポーツ部文化芸術課

〒 602-8570京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町